世界が終わるよ

「赤司君ー、後どれくらいで終わっちゃうんだっけ?」
「ん、後…5分くらいじゃないか?」
「もうそんな」
「みたいだ」

私と赤司君は、二人きりで学校の屋上にあがっている。ここからの景色は絶景だ。天と地が逆さになっているみたい。私達がいるここが空で、今まさに落ちてくる隕石が地上みたい。その間に見える赤い空は、赤司君の髪のようで、いいなぁと思う。

世界が終わるっていうニュースが突然流れ出した時は、皆半信半疑だったけれど、この空を見れば、誰もが「あぁ本当に世界は終わるんだ」って、思うに違いない。
ある人は旅に出て、ある人は思う存分好きな物を食べて、ある人は、その運命を受け入れて、ある人は好きな人を引き連れて、終わりを迎えようとしている。
テレビは何も写らなくなった。お店は放置されて、荒れてる所もあったっけ。
クラスのいじめっこは殺されたみたい、って誰か笑って言ってたっけ。

「私達、こうして今手をつないでいるけれど、あれがここまで落ちちゃったら、何もなくなって、考える事も何か見ることも感じることも出来なくなっちゃうんだね」
「そうだな、天国なんてものがあれば、丁度いいのだけど」
「赤司君はどっちかというと地獄行きのような…あぁ、ごめんごめん」

座って、手を繋いで、顔を見合わせて、笑う。
私達は神様なんて都合の良い時くらいしか信じていない。
だけど、こんな事になってしまったから神様という存在は無かったんだなぁ、と笑いあえる。
だからこそ、天国も地獄もないのだと思う。(いないはずの神様への反抗心でもある)
死んだらそこにあるのは、無。
「無」が死んだら、そこにあるなんて、矛盾している。
誰も死後を説明できないからこそ、死に対して、生きている私達は、よく分からないものだ、と感じていた。
死に近づく人でしか死の恐怖は感じられないのだ。だから今の私達はとても怖い。死ぬのが怖い。
私達、無になってしまうのだ。

「なんだって私達の代で世界が終わっちゃうんだろうね、本当に、タイミングが悪い、私達まだ青春できる年なのに」

そう言ってため息をついていながら、体は震えていた。
だから赤司君の手のぬくもりを感じて安心しようと、ぎゅうと私から彼の手を強く握るのだった。

「そうだな」

赤司君は間をおいて、空を見上げながら呟いた。その間に、何を思ったのだろう。
こういう時は、何でも知っておきたいので、聞いてみる事にした。すると返って来たのは、私を少し傷つける言葉だった。

「…もし、このまま何もなく日常が過ぎていったら、お前と死ぬまで一緒だったとは限らなかっただろうなって」
「こんな時に、そんな事思うなんて…酷いなぁ」
「すまない、だから、こうやって思いあったままお前と死ねるのは、悪くないと思ったんだ」
「…赤司君」

赤司君はきれいな瞳を私に向け、微笑む。

「私幸せものだね」

だけど、もう少し、まだ、その幸福を感じていたいな。

死ぬ前に赤司。
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