赤司君食べてもいいですか?
背はそこそこあるけど、そこまで高いとは思わない。そしてツリ目の童顔。オッドアイ。普段は先輩である私に丁寧に接してくれるけど、部活での唯一神ぶりのギャップ。…萌え要素がいっぱいある後輩の赤司君を想像して、私は目を輝かせた。
「ねえ、レオちゃん」
「ん?何?」
「赤司君食べちゃいたいんだけど…」
思ったことをそのまま口にしたら、同じクラスの姉御的存在、レオちゃんは笑顔のまま固まった。そして、顔を強張らせ「それ無理、無理だからゼッタイ」と激しく首を振った。
「えっ…なんでそんな無理なんて言うの?これまでたくさん応援してくれたじゃない」
「これまでは、征ちゃんに話しかけたいとか、挨拶したいとか、そうい初歩的なサポートをしてきたじゃない。それが、突然「食べたい」だなんて…!!ど、どういう意味でよ!」
「文字通りの意味だよ。もぐもぐだよ」
「駄目ェ!そんな事、征ちゃんの前で絶対言っちゃ駄目よ!!」
「え?フリ?」
「違うから!!」
「貴方の死活問題よ!」と言われた。どうしてだろう?今まで、赤司君とちょくちょく話してきたが、嫌われてる様子はないと思う。欲望をセーブして、素敵な先輩ぶり見せてきた。だからこそ、我慢の限界である。いい子ヅラなんかしてられるかーー!!
「早速一年生の教室行ってくる!」
「やめて!後輩の前で公開処刑なんて、学校通えなくなるレベルだからッ――!!」
ダッシュで一年生の教室まで行こうとするが、レオちゃんが私の肩をおさえてまで行くのを阻止したいようだ。
「あっイケメン!」
「えッ!?どこどこ!?…アッ!?!騙したわね!!」
釣られたレオちゃんを尻目に、私は一年生の教室へダッシュで向かった。
**
「赤司君!!」
赤い髪の少年が教科書を抱えて歩いている。廊下で会えるなんて、呼ぶ手間も省けるってもんだ。私は日頃のパトスを爆発させた。彼に走って抱きつこうとした。
だが、背中を向けたまま赤司君は、私の突き出した手を掴むと(えっ?)そのまま地面に私をはった押した。
「あ、あいき…どう…」
「先輩!?学内で襲われたと思ったら先輩だったんですか!?」
「我が生涯に一片の悔いなし」
「先輩!?」
赤司君が仰向けで倒れる私を介抱してくれる。私の顔を焦りながら覗き込んでくる赤司君可愛い。可愛い。このまま気絶しそうになる私に叫び声が聞こえてくる。
「やっぱり大変な事になってた!!アンタ、やめときなさいって言ったでしょ!!」
「じぇじぇ!?」
「時事ネタ挟んで可愛く驚いたって駄目よ!許さないわ!」
レオちゃんが駆けつけてきた。私の頬を眉をつりあげながらひっぱるレオちゃん。痛い。愛が痛い。
「玲央、そこまでにしないか。これは僕の責任だ」
「いえ、でも…」
「先輩、すみません」
「赤司君…」
また赤司君の新たな一面が見られた。心底申し訳なさそうに頭を垂れている。可愛い!!っていうかさっきからずっと頬引っ張るのやめてくれる?台無しじゃない!私はレオちゃんの手を振り払うと、起き上がって赤司君の手を握った。
「すまないと思ってるなら、抱きついていい?」
「え?」
「抱きついていい?あわよくば、ほっぺたも触っていい?」
「いや、あの先輩…。ここ廊下です…」
「抱きついていい?」
「征ちゃん…。この子、無限ループに入ったわ」
うろたえる赤司君可愛い。私は上目遣いで、なるべく大きく目を開けて、彼を見つめる。困った時の無限ループ。
「…それで、許してもらえるなら…うわっ」
赤司君の言葉を待たずに抱きついた。これが赤司君の香り…。ふむ、ドラックストア行ったらこの匂いの洗剤探さないと。あぁ、赤い髪が視界の端でさらさら揺れている。綺麗。
「あの、先輩…」
「赤司君とずっとこうしたかったんだぁ…」
「人がこうも往来する中でよくもまぁ…でも、食べたいってそういう意味だったのね」
「玲央?食べたいって…」
「な、何でもないわ!!って…あら?」
**
はそのままの体勢で気絶した。巴投げされたショックはやはり残ってたみたい。幸せそうな顔だった。征ちゃんに彼女をおんぶしてもらって保健室に運んでもらう。私は征ちゃんにひとつ、聞いてみたい事があった。
「征ちゃん、よく抱きつくの許したわよね」
「仕方ないだろう。先輩の頼みなんだ」
私達、部員と会話する時は少し固い顔をする征ちゃん。きりっとした顔で前方を見据えている。…でも、あの時の赤くなった征ちゃんを思い出したら、ふふ、と笑ってしまう。
「って言う割には、嬉しそうだったけど?」
「…玲央。練習を倍にするか?」
「なんでもありません」
暴走させたい。