青春あれこれ
部活帰り、黒子は厳しい練習のおかげで体がボロボロであった。歩幅の大きい仲間達に遅れまいと疲れを表情に出さずに歩みを進める。
だが、何気ない話を交わす彼らを見ていると、一緒に帰り路を歩いている自分が誇らしくて、自然と体が軽くなっていく。…しかし、それも表情に出さず、無表情で青峰、黄瀬の後ろを歩いている黒子であった。
大体黄瀬と青峰が先頭を歩き、そのすぐ後ろを黒子が歩いている。たまに会話に入ったりする為だ。その後ろを赤司と緑間、紫原が歩く。大体赤司は二人に挟まれている形。なんとなく凹の形っぽいな、と黒子は思っている。
「黒子」
それも踏まえて、今回自分に話しかけてきた赤司に少々驚いていたりする。
黒子は赤司の事を尊敬しているし、自分の能力を買ってくれた恩人だと思っている。だからこそ気軽に話せる人物ではなかった。
「今日も練習を頑張っていたな。パス回しがより上手くなっているよ」
「有難うございます」
無意識に何を言われるのか、と身構えていたら褒められた。体の力を少し抜く。赤司はそれが分かったかのようにふっと目を細める。今、緊張しているのも分かっているんだろうな、と思わずにいられない。やはり会話するだけで凄みのある人だと思っていた。
「ところで、相談があるんだが…」
「は、はい?…僕にですか」
悩みなんて自己完結してそうな人が自分に相談!?黒子はおもわず聞き返す。赤司は見るからに物憂げな表情で自分を見据えている。頼られたという高揚感と上手く答えられるのか、という大きな不安に襲われる。
「あぁ、…実は、ある人を好きになったんだ」
まさかの恋の相談だった。…これもこれで難しい相談だ。全力で彼の助けにならねば、と黒子はぐっと手のひらを握る。その時肩にずっしりと重みを感じ、おもわず振り返った。
「え〜酷くね〜。仲のいい俺らより黒ちんに話すのそれ」
「紫原、緑間も。…お前らはまともに恋愛をした事がなさそうだからな」
「失礼なのだよ!」
肩にずっしりの原因は、相談の重みではなく紫原が手を乗せてきたせいだった。彼にとっては軽く乗せているつもりなのだろうが、すさまじい圧力である。黒子はグーで紫原の手を叩いて、のけろと主張する。しぶしぶ手をのけて自分の隣に並んだ紫原。それを確認した後黒子が見たのは、緑間がメガネに手をあて、真っ赤になっている光景だった。
「ははは、お前の恋路は分かったよ。でもこういう事は冷静な目で見れるだろう黒子に相談しておきたかったんだ」
「緑間君の恋路ですか」
「う、うるさい!黙るのだよ!」
緑間が恋をしていた、もしくはしているという事に愕然とした。
赤司はそんな黒子の方を改めて向くと、真剣な表情で「早速話してもいいかな」と確認してくる。慌てて頷く。もし答えに詰まったらこの二人にも助けを求めよう、と思った。あんまり期待できないけど、とも。
「実は、同じクラスのさんが気になっていてな」
「さん…って、図書委員もやってる人ですよね」
「あ?…って…、あの大人しめな子か」
「ナチュラルに青峰君と黄瀬君が入ってきましたけど」
「まぁ仕方ない」
前方を歩いていた二人も話を聞いていたのか、いつの間にか近くにいた。…青峰はとは違うクラスなのにどんな人物なのか知っているようだ。ろくでもない理由で覚えていそうだ。
「…彼女とは特に話したことはないんだが」
「はあ!?話したこともないのに」
「青峰、ちょっと黙ってくれないかな」
赤司の鋭い眼光の前には、あの青峰も黙りこむ。
…でも、話したこともないのに好きになるなんて珍しいかもしれない。
「彼女に好かれてるとは思うんだ」
「え、そうなんスか!?」
「いつも熱い視線を向けられているからな。…じっと、黙ったまま俺を見ているんだ」
「えっ…。それただの自意識過剰じゃ…」
「黄瀬、明日は覚悟しておけよ」
「えっ!?やだな〜〜冗談ッスよ?え、ちょ、赤司っち!?」
確かに自意識過剰だと言いそうになった。口を噤んでいてよかった。黒子は胸をなでおろした。
だが赤司に限ってこんな恥ずかしい勘違いはしないだろう。…そう信じたい。
なおも赤司の小恥ずかしい告白は続く。
「だが、クラスや図書室で接する時、彼女は控えめなんだ。微笑みながら図書を貸し出してくれるとかな。とくにアピールはしないんだ。…そんな態度をされる内に、俺の方から気になってしまってね」
「お、おう…。なるほどなー」
「さて、黒子、俺はどうしたらいいのかな」
「えっ」
赤司は黒子を見つめる。黒子は暫く考えこむ。周囲の人間は手を貸す気配がない。巻き込まれたくないようだ。とてつもないプレッシャー。試合と同じ、いやそれ以上…?
告白しろ、とスパっと言いたかったが、もし駄目だった場合完璧主義な彼がどう思うか…。赤司があまり傷つかない方法を模索する。
「…じっと見つめ返してみたら、どうでしょうか。その視線をちゃんと受け止めた事ってないんですよね?」
「あぁ、気配を感じているだけだ。なるほど、そうすれば、相手の反応次第で、どう思われてるか分かる訳か」
「えぇ(見つめられている事前提ですが)」
「テツ、なかなかやるじゃねーか」
「割とと上手い切り返しだと思うぞ」
危機を脱した途端に声をかけて、認められても…。黒子はなんとなく複雑な気分に陥った。
黄瀬の様子が先ほどから落ち込んでいるように見えるが、黒子はあえてそれを無視しておいた。
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翌日、赤司のいるクラスの廊下に、カラフルな色合いの頭達が集まっていた。
青峰は面白半分な気持ちで駆けつけた。黒子はの顔を凝視している。(顔を赤くさせろと願うように)緑間は赤司に春が来るように、ラッキーアイテムを赤司の分まで持ったままウロウロしている。紫原は隠れきれてないのに教室のドアの影から赤司の様子を覗いている。彼は上手くいけと応援しているものの、赤司と過ごす時間が減るのは嫌だなぁと素直に悩んでいる。黄瀬はなんか死にそう。
クラスのほとんどがヒソヒソ廊下をチラ見しながらささやき合っている。はそんな事お構いなしに赤司を見つめている。赤司は後で全員練習二倍にしよ、と思った。
赤司がの方に振り返った結果は、Webで。
あとがき
素晴らしきかな。13.12.05