全てはあなたの望むままに
2年目の学校生活が始まったというのに、友達が出来るのを諦めていた桃井。しかし、そんな彼女の元に、一人の少女が声をかけてきた。それが桃井にとって部活以外で楽しい学校生活の始まりだった。
声をかけてきた少女は、いたって普通の女の子だった。
最初はバスケ部員目当てかと思っていた桃井だったが、すぐその考えを改める事になった。
「私、さつきちゃん目当てで声かけたんだよ、心外だな」
まるで取り入ろうとしないという風に、彼女はベタベタとくっついてこず、自分のペースで桃井と仲良くなろうと努力していた。
飼っている猫や父親、母親の話、嬉しそうに話す彼女はとても家族を愛しているようだ。そんな家族や自分に起こった面白い出来事、自分の趣味を適度に話し、桃井にも話を振り、彼女の話をさせるのが上手な子だった。
「桃井さん」とずっと呼んでいたに、桃井が名前でいいと言うくらいの頃に、バスケ部の男の子に興味ないの?と聞いた返事が上の言葉である。
桃井は、本心からの言葉だと思ってしまいそうになる程、誠実に彼女は言った。続けて私はバスケ部の人には興味ないけど、バスケ部の事を話すさつきちゃんが好きだよ、と恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく言ってのけた。
何故か桃井は赤面してしまった。何の変哲もない、それは友情だというのに。しゅるると、力が抜けたように「ありがとう」と言った。ちょっと目が潤んでもいた。
桃井にとって、何年ぶりかの女友達が出来た。彼女と桃井は気の置けない友人になるのも、そう遠くはなかった。
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「桃井っちに女の子の友達、できたんスね!おめでとう!」
「ありがとう、きーくん」
仲のいい男友達からのお祝いの言葉。桃井は男友達ならいた。バスケ部の一軍メンバー達だ。桃井は一緒にバスケをプレイする訳ではないが、バスケ部を支えるといった形で、一軍達も彼女を認めていった。中でも仲がいいのは、幼馴染の青峰か。
…彼女はその可愛らしい顔とグラマラスな体つきのおかげで、男子にモテる。そんな彼女にあまりなびかないのが一軍の男くらいだろう。
中でも黄瀬は同じようにルックスのおかげで苦労している仲間だ。
「本当に良い子なんだよね、一緒にいると元気になれるし、最近はよく遊びにいくんだー」
「へえ〜いい事ッスね!見た目で判断しない子…ということは、俺にも紹介してくれないかな?」
「やだー、ちゃんはきーちゃんに取られたくありません!」
「冗談ッスよ!」
桃井は、今日も部活は楽しくやっているのだが、部活終わりも楽しみであった。
もテニス部に入っていて、部活が終わったら一緒に帰ることが出来るからだ。
「あ、ちゃんじゃ、あれ」
「えっ?」
開け放たれた体育館の扉の陰で、むう、と、じと目にしながら桃井達を見つめる女の子。
確かにだが、何故か不機嫌そう。おもわず練習中にもかかわらず駆け寄る桃井。
「早いね、テニス部もう終わったの?ごめん待たせちゃって」
「あ、ううん、それでブスーしてる訳じゃないからね?寧ろ待ち時間もさつきちゃん見てるから楽しいんだけど…」
「ふふ、何それ、じゃあ何でそんなブスっとしてるの?」
「黄瀬君に嫉妬してた」
桃井にではなく、黄瀬に嫉妬?おもわず首を傾げる桃井にが抱きつく。
「きゃ、ちゃん!」
「さつきちゃんが、黄瀬君にもってかれないか心配で心配で…うーんさっちゃん分補給補給」
「はーなーれーてーよーっもうっ!」
桃井に頬ずりする。桃井はそう言っても、別に嫌そうではない。
黄瀬は、久しぶりに出来た女友達とはいえ、スキンシップが激しすぎるのに気付いていないののだろうか?と思った。
そして生暖かくそれを見守った。なんだかんだいって可愛い女子二人が触れ合うのは見ていて、心温かくなるものがある。
そこに青峰が汗をぬぐいながらやってきた。そして、「結構かわいいな」と呟いた。何がだ。
「え、桃井っちが?幼馴染の大切さに気付いたんスか?」
「ちげーよ、ちゃんだよ」
「あ、桃井っちからもう聞いてるんだ」
「おう…まぁまぁおっぱいあるし、いいな」
「青峰っちサイテー!!」
黄瀬と青峰が騒ぎ出した所、威圧感のある声が後ろから聞こえた。
「真面目に練習をしろ」
「はいッス…」
「お、おう…」
「…だが、見ていて何となく心安らぐものだな」
「赤司っち!?」
の鼓動が早くなっている事に気付いているものは誰もいなかった。