高校にて(誕生日編)
指と指を絡めて手を繋ぐ。もう冬だというのに私達はこうする為にお互い手袋をつけていない。征ちゃんの体温が感じられて嬉しい。冷たい風に吹かれながらも心はポカポカとするのだった。
「征ちゃん、この本どうだった?」
「面白かったよ。…の本の目利きはより良くなっていくね」
「本当?良かった。有難う」
「僕の好きな作家は、の好きな作家だものね」
「う、うん…」
征ちゃんが好きそうな本を私も読んでいる。それも征ちゃんの喜ぶ顔が見たいから…、難しい詩集とか純文学を頑張って読んでいるのだ。自分が好きかどうかは分からない。
私のそんな心も読まれているのか、征ちゃんは猫目を細めて笑う。もしかしたら、これって征ちゃん色に染められてるってことなのか。恥ずかしさで頭を抱えたくなってきた。
図書館へ手をつなぎながら向かう途中、お店通りに差し掛かる。
突然征ちゃんが立ち止まった。続けて私も立ち止まる。
「征ちゃん?」
彼女がじっと見つめるのは、ショーウィンドウのマネキンが身につけているブーツ(…だと思う)目線が下に向いてるもの。
征ちゃんは好んでロングブーツを履いている。だが、マネキンは可愛らしいファーがついたショートブーツを履いている。たまにはこういうのも履いてみたいのか。
「可愛いね」
「…あぁ」
征ちゃんの横顔を伺うと、彼女はぼうっと何か物思いに耽けていた。
私も征羅ちゃんのショートブーツ姿を想像して、頷く。クールな征ちゃんが可愛らしく見える筈。
そういえば征羅ちゃん近々誕生日だったっけ。…あ、じゃあこれは。私は名案を思いついた。彼女の誕生日にこのブーツを捧げようじゃないか!私は思いがけないプレゼント候補との出会いに胸を高鳴らせた。
去年はブックカバーをあげたけど、今年はこれをあげよう。征羅ちゃんって何で喜びそうなのか、難しいそうだよね。
私はブーツの形状を目に焼き付けると、征羅ちゃんの手をぎゅうと握った。
**
準備には色々とお金がいる。私はバイトをしていないので、仕送りから彼女のプレゼント予算を間に合わせないといけない。服、お菓子、その他色々を買わないようにして、彼女の隙を見て買いに行かなきゃ。私は張り切っていた。
しかし、予算よりも、彼女の隙を見て買いに行く、というのが難しい事に気付いた。
平日は学校。そして学校帰りにどこか寄り道しようものなら彼女は意地でもついてくる。夜道を一人でどこか寄るのは危険だって征羅ちゃんの言うことは分かるけど。プレゼントが!!プレゼントがあ!!私も食い下がる。だが彼女がオッドアイで睨むと、嫌でも竦んでしまう。
そして二十日になってしまった。私は部活を終えた後、何気なく彼女を避けて帰ろうとした。だがやはりそれも看破されて出入口で征ちゃんが仁王立ちしていた。腕組みしてるよ。怖い、泣く子も黙るレベル。
「…あの、征ちゃん…」
「ここの所なんだい、僕に黙って一人で帰ろうとしたり…」
「あ、…うぅ」
悲しげに怒る征羅ちゃんを見て、ふと自分が彼女を傷つけている事に気付いた。このままぎくしゃくして…。最悪の展開まで浮かぶ。それは嫌だ。正直に話す事にした。
「…実は、ね。…靴を買おうと思ってたの」
「…もしかして、あの時のブーツか?」
「うん…。征羅ちゃん欲しそうだったから…。ごめんね、どうしてもプレゼントしたくって」
「なんだ、そんな事か。それなら取り寄せたよ」
「え!?」
ど、どういうことなの…!?
「…実は君にプレゼントする為にそのブーツを買ったんだ」
「え?え?私に?」
おもわず聞き返す。…じゃああそこでじいっと見てたのって…。
「私の為って事…」
「あぁ、まさか僕にプレゼントしようしてたなんてね」
「せ、征ちゃん…」
征ちゃんが慈愛に満ちた表情で私の頭をなでてくれる。
「…征ちゃん。…有難う」
「ふふ、どういたしまして。…さては今日何をプレゼントしてくれるんだろうね?」
「――ッ!?」
顔を近づけ、艶っぽい声を出す征羅ちゃん。おもわずびくりと体を震わせる。そ、そうだ。…プレゼントどうしよう。…最終手段は…。
「わ、私を、プレゼント…?…ん?」
「あぁ、それが一番のプレゼントだ。…、一緒にケーキ買おうか。その後朝まで…ね?」
「〜〜〜〜ッ!!」
今夜は大変なことになるようです。
「またあの二人、イチャイチャしてるよ」
「シッ!黙って去るわよ…!」
なれた。 13.12.28